Compact Disc
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EMI - 0946 3 94071 2 5 (HAWKSR 4) (2007)
名盤をほぼコンプリートしたコレクター向けアルバム。これがリリースされた時はついにコンプリート版なのか?と思ったのですが、その後なぜかTime We Left This World Todayがショート編集されたままで収録されていたことが判明。そこ以外は当時のステージがほぼコンプリートされたアルバム。
2CD+DVD、プラスリップケース、4面デジパック、ブックレット。表カバーは96年版に対してイラストの彩色が品良くなっています。
左のディスクがDVD。
CD1
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CD2
--Bonus Tracks--
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DVD(PAL) --Audio Section--
--Video Section--
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UA時代の権利を持っているEMIは、シングル集STASISや96年の1st〜5th公式CD化の際にボートラ追加、97年に未発表ライブ1999PARTYのリリースなどコアなファンも喜ぶ企画を行なってきましたが、今回はついに名盤に着手。
このコレクターズエディションが従来の1996年リマスターに対してどのように違うのかを説明する前に、オリジナルLPや関係音源を整理してみましょう。
オリジナルリリースはLP2枚組で、72年11月から12月にUK内で実施されたSPACE RITUALツアーのうち、12月22日リバプール・スタジアムと12月30日のブリクストン・サンダウンのテイクから選抜されています。どの曲がいずれの日のものかクレジットはなく、一つのショーのように各曲間を歓声などで繋いでいます。また当時のセトリから、収録曲順は当時の演奏順を再現していますが、アンコールは未収録でした。
またLPのクレジットには、長すぎてレコードに収まらないという理由からBrainstormとTime We Leftの2曲は一部を編集したと記載されています。
関連のソースとして、76年にリリースされたコンピレーションアルバムROADHAWKSに30日のアンコールと記載されたYou Shouldn't Do Thatが収録されました。
さらにデイヴ・アンダーソンがリリースした非公式アルバムSPACE RITUAL VOLUME2のクレジットは30日ブリクストンと記載され、公式LPと同じテイクと異なるテイクが収録されていました。しかしながら、この30日収録という表記も正しいのか確証はありませんでした。結論として誤りだったことが判明(後述)。
そして決定的な確証が得られたのは2023年にATOMHENGEからリリースされた50th Anniversary DELUXE EDITIONに各公演の元音源が収録されたことで一気に解明されました。
その上でこのコレクターズエディションを見てましょう。以下のクレジットが記載されています。
■アルバム本編
・Brainstorm 未発表完全版
・Welcome To The Future 未発表完全版
・You Shouldn't Do That 未発表テイク
■ボーナストラック
・Orgone Accumulator 別の晩のテイク
・Time We Left This World Today 別の晩のテイク
・You Shouldn't Do That 別の晩のテイク
上記に沿って確認してみましょう。
・LPでは短く編集されたというBrainstormがコンプリートバージョンと称され本来の長さで聴けます。リバプールでのテイク。従来は9分19秒、ここでは13分46秒。間奏が実際はもっと長く、また従来最後にフェードアウトしてしまう部分は曲のエンディングパートで、そこも最後まで収録されています。
・Welcome To The Futureがコンプリートバージョンと称され本来の長さで聴けます。リバプールでのテイク。従来は2分4秒、ここでは2分50秒。中間の語りが数十秒長いだけの違いですので、従来版は短くする必要があったのかなと思います。
・上記Welcomeの演奏終了後、観客の足踏みアンコールに応えたYou Shouldn'tが始まりますが、実際のリバプールでの実況。このリバプール・テイクはこの時点で初出。
・ボーナストラックのOrgoneとTime We Leftは公式リリースとしては初出。リバプール・テイク。この2曲は先に述べました非公式盤SPACE RITUAL VOLUME2に収録されているトラックと同じです。非公式盤の記述は30日のブリクストンとありますが、それが間違いであることが判明。この時期の日毎の演奏の違いがわかるので興味深い収録です。
Orgoneのアルバム本編トラック(ブリクストン)では中間のレミーの演奏が盛り上がりを見せますが、ボートラの方(リバプール)は全体感で押しています。本編トラックの方がより熱い演奏なので、選択されたのも良く分かります。最後はフェードアウトするのは次のUpsideのイントロが繋がったまま始まるからです。
Time We Leftは13分に及ぶリバプールでの熱演。本編トラック(ブリクストン・テイク)は5分、こちらも本来は11分の演奏ですので、短く編集されたままで収録されたことになります。よって、このアルバム、コンプリートではないということになります。
・You Shouldn'tは、以前コンピ盤ROADHAWKSに収録されたトラックと同じもの。ブリクストンテイクですが、これも本来の演奏より30秒ほど短く編集されたROADHAWKSに収録されたものと同じ。
そしてDVD。日本では専用の環境が必要なPALフォーマットです。
■DVD本編
CDの本編トラックと全く同じ内容で、BrainstromとWelcomeがノーカット版、そしてアンコールのYou Shouldn’t未発表テイクを加えたもの。ボートラは含まず。
CDの2chマスターから5.1chにアップミックスし、DTSとドルビーデジタルの2つのソースを収録しています。このサラウンドに加えて、2chのPCM Stereo(24bit/48KHz)も用意。
再生すると、アルバムカバーのイラストをベースにビジュアライジング処理したサイケな画像が延々続きます。サラウンドは2chからのアップミックスですので疑似サラウンドです。基本はフロント2ch中心に前に定位させて、リアは音量小さめにしてるだけのようなものです。元が元だけに、ハイレゾにしたところで、恩恵はほとんどないですね。
■DVD映像
プロモビデオとしてSilver Machine、Urban Guerillaの2つが収録。UA時代のプロモーション映像はこの2本だけですので、これは嬉しいですね。今やYoutubeなどで見放題ですが。
■DVDギャラリー
ギャラリーには何枚かのスチル写真。これは特に目新しものはありません。
DVDのメニュー画面とオーディオセットアップ画面、プロモフィルムの選択画面。
再生中流れるビジュアライジングされた画像。
プロモビデオ。Silver MachineのシーンとUrban Guerillaで歌うカルバート。わずかな時間ですが、初めて当時の動くカルバートとステイシアのヌードダンスを見ることができました。
CDのマスタリングは2007年新リマスターで、96年リマスターに対して各楽器の分離が明確になっています。コンプリートバージョンの2トラック(Brainstorm/Welcome To The Future)を除いて、再ミックスダウンはされていないようです。
なお後年DVDを除いた2CD版もリリースされます。
2007年のホークウインドは新作のリリースはなかったのですが、話題には事欠かない年でした。春先の3月にBBCチャンネル4で1時間のドキュメンタリー番組Hawkwind Do Not PanicがOAされました。メンバーや関係者のインタビューなどを交えた興味深い内容ですが、ニック・ターナーがインタビューなどで番組に関わることに反対したブロックが出演拒否するという事態に。当時ニックがxhawkwindと名乗り旧メンバーと活動を行なっていたため、2つのホークウインドが存在する状況になってしまい、ブロックはターナーやプロモーターに対してHawkwind名称使用差し止めを請求していました。そのような背景からブロックはターナー出演を認められない事情がありました。番組制作からブロックは降板しインタビューも全て削除、デイヴ抜きのメンバーのインタビューで構成されました。そんな残念な事情がありましたが、ムアコック、ターナー、スラットリー、レミー、オリス、ハウス、ラントン、ダグ・スミスなどのインタビュー、バスキング時代のブロックの映像、当時のラドブローク・グローブの様子、ワイト島などの映像など見所がたくさんありました。ホークスの演奏シーンは70年代はプロモ映像以外は全くなかったです。
6月にアラン・デイヴィが脱退表明。90年代にも一時脱退し、再び戻ってきたのですが、今回は完全に離脱。長年ブロックの片腕を努めてきましたが、潮時だったようです。自作曲があまり取り上げられないなど、ブロックに対しての不満がかなり溜まっていたようです。在籍中はブロックと一緒にニックの批判をしていたのですが、脱退後はニック周辺にも参加するなど、素早い変わり身ぶりでした。後任として、2004年からギターや朗読で客演していたMr.ディブスが参加し、ベースとボーカルを担当します。もともとホークスのローディで、自らのバンドSPACEHEADでは、ベース&ボーカルを担当していたので、手慣れた感じでホークスには溶け込みました。ブロック、チャドウィック、ステュワートにディブスという新生ホークウインドは6月からツアーを実施。3日間だけですが、久しぶりのUSツアーを敢行しました。
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2025/03/17 update