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Analog Disc

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THE SPACE RITUAL ALIVE IN LIVERPOOL AND LONDON

United Artists - UAD 60037/8 (1973)

SPACE RITUAL United Artists UAD 60037/8
その象徴的なイメージによってアルバムの存在感を印象付ける名盤にふさわしいカバー。デザインはバーニー・バブルス。この面を中心に左右面が開きます。
SPACE RITUAL United Artists UAD 60037/8
その裏側。
SPACE RITUAL United Artists UAD 60037/8
さらに上下に開いたその裏側は1色刷りでクレジットが記載されています。
SPACE RITUAL United Artists UAD 60037/8
レコードスリーブは曼荼羅のようなタペストリー。B.バブルスのデザインワークが素晴らしい。
SPACE RITUAL United Artists UAD 60037/8
マトリクスは1、2枚目ともに、A-2U、B-2U。Side1のみRAYSエッチングあり。

Side 1
  1. Earth Calling
  2. Born To Go
  3. Down Through The Night
  4. The Awakening
Side 2
  1. Lord Of Light
  2. The Black Corridor
  3. Space Is Deep
  4. Electronic No 1
Side 3
  1. Orgone Accumulator
  2. Upside Down
  3. Brainstorm
Side 4
  1. 7 By 7
  2. Sonic Attack
  3. Time We Left This World Today
  4. Master Of The Universe
  5. Welcome To The Future

2023年にリリースされた50th Anniversary Deluxe Editionをリファレンスとして再レビューの予定です。以下の記載は以前のものです。

1973年5月、ホークスの歴史上、燦然と輝くことになる名盤が登場します。前年夏のシルバー・マシンの大ヒットに続き、3枚目のアルバムDOREMI FASOL LATIDOを72年11月にリリースすると告知。そのプロモーションとしてUK縦断ツアーを11月、12月に実行。ステージはSPACE RITUALと題され、ブロックが兼ねてより念願であった音と映像を融合させたスペース・オペラとして展開されました。ステージコンセプトは前2作のアルバムカバーを担当したバーニー・バブルス。
2ヶ月で実に30回近いステージをこなすハードなロードで、このアルバムはその後半12月22日リバプール及び最終日の30日ロンドンの演奏を収め、73年5月にリリース。
このアルバムで伺えるパワフルなステージを、2ヶ月間ほぼ1日おきで行ったホークウインド。その当時の勢い、精力的なステージの一端を垣間見ることができます。

Hawkwind 1972

SPACE RITUALのステージは、このツアー中に発売された最新アルバムDOREMI FASOL LATIDOのコンセプトであるカルバートのThe Saga of Doremi Fasol Latidoをベースに、各演奏者を太陽系の惑星に対応させ「音のピタゴラス的概念」に基づいたステージを行うというものだそうです(日本盤の解説より)。そのコンセプトはバブルスによる設計書が作成され、ステージデザインされました。理屈はムチャクチャな感じがしますが、何よりもここで繰り広げられるリズムとギター、サックス、フルート、電子音の洪水は宇宙空間を突き進むが如く怒濤の推進力で、既存のアルバム収録曲が霞むような迫力。合間に現れる浮遊感のある静の演奏と動の演奏が渾然一体となって圧倒的なトリップ感覚を生み出します。ホークスを代表する1枚であると共に、ロック史に残る名盤。のちのパンクロッカー達がホークスに影響を受けたと明言しているように、ここでの演奏は音楽的技術やセンスなどとは別次元の在り方で、当時のホークスのスピリットを象徴するものです。
アルバム冒頭の電子音とカルバートの朗読(Earth Calling)からレミーのドライブ感あるベースに引っ張られてスタートするBorn To Goなど新曲が多く含まれており、リリース直後のアルバムDOREMI FASOL LATIDOの拡大版という印象。SF作家マイケル・ムアコック作詞の曲も初めて登場します。

参加メンバーはDOREMI FASOL LATIDO参加の6人に加えカルバートも参加。12月30日のブリクストンのステージにはTHE PINK FARIESのツインクも参加していたという情報があるのですが、アルバムには記載ありません。

Hawkwind 1972
【HAWKWIND 1972】L to R:Del Dettmar-Stacia-Nik Turner-Dik Mik-Simon King-Dave Brock-Lemmy-Bob Calvert

クレジットにはBrainstormとTime We Left This World Todayは、あまりに長い演奏なので、収録にあたって一部カットし編集したと記載されています。
<Side1>虚無の宇宙空間に発信する this is earth calling...という儀式の始まりのようなアナウンス、電子音の高まりに合わせて決めの一発コードがかき鳴らされ、オープニングにふさわしいノリのBorn To Go開始。カルバートとブロックの共作、中間部のギターソロにもなっていないブロックのいなたいギタープレイが延々と続きますが、終盤Aメロに戻ってくる時にノセられていれば、このアルバム十分に楽しめると思います。数人のボーカルが聞こえますが、メインはカルバート。 続くDown Through The Night、DOREMI収録曲。レミーのベースリフが印象的でカッコイイですね。ボーカルはデイヴ。Side1最後はカルバートの朗読、The Awakening。
<Side2>Lord Of Lightはデイヴ作曲、ボーカル、これもDOREMIから。ここでもレミーのベースのドライブ感が効いてます。続く朗読曲はムアコックの「暗黒の回廊」。ここからしばらく新曲が続きます。同題の小説の中で語られる宇宙の広大さと空虚さをニックが朗読。その詩に呼応する形でデイヴのSpace Is Deep、DOREMIからの曲。間奏はメジャーコードで明るく雄大に進行。その後、ドラムレスでベースとギターによる2ndのYou Know You're Only Dreamingと同じ半音階進行が印象的。Side2最後は、電子音の乱舞する小曲Electronic No1。
<Side3>カルバート節炸裂のOrgone Accumulator。マッドサイエンティストとも評されたヴィルヘルム・ライヒのオルゴン理論に基づいて製作されたオルゴン集積機のことを歌ったもの。カルバートのロックンロールとレミーのベースはとても相性が良い例。続くデイヴのUpside Downも新曲。10 Seconds Of Foreverはカルバートの朗読曲。静寂を切り裂くように突如開始するのはDOREMIオープニングナンバーBrainstrom。突っ走り感、最高潮に達します。演奏が一段落後、次の曲のイントロらしきものが聞こえますが、フェードアウト。のちの完全版で判明しますが、ここで曲は終わっておらずエンディングパートの頭部分だったのです、しかしアナログ盤のSide3はここで終わり。
<Side4>ブロックのブルージーな7 By 7からスタート。この曲も新曲で中間部にカルバートの語りが入ります。そしてショーのハイライトの一つ、ムアコックの書いたSonic Attackが演じられます。ディクミクとデトマーの電子音とカルバートの朗読、メンバーが呼応するようにつぶやき、叫びます。一定のリズムが入ってくるとそこからTime We Left This World Today。重い反復リフが引きずるように続きます。デイヴのリードボーカルにメンバーが合いの手をいれます。そしてホワイトノイズの中、終盤に向かってMaster Of The Universe。2ndアルバムの曲ですが、よりアップテンポにハードに演奏、破壊力抜群です。ボーカルはニック。ラストはカルバートの朗読、その他メンバーのyou are welcomeという声が呟かれ、コード1発で終了。

Space Ritual Tour Program 1972
SPACE RITUALツアープログラム。国内盤CDにレプリカがついてますが、実際はLPジャケに対してこのサイズ。



アルバムに収録されている12月30日のブリクストンで一区切りし、1月はオフを取り、2月からこのステージを再開、英国内及びヨーロッパを3月中旬までツアー。このアルバムリリースに伴うツアーを4月から開始。5月のステージではカルバートをフロントマンにした、趣向の異なったステージを展開していました(非公式盤BRING ME THE HEAD OF YURI GAGARINで確認できます)。その後ステージ内容はSAPCE RITUALのセットリストに戻されました。
このアルバムは5月11日にリリースされ、6月にチャートイン。ホークスのアルバム史上最高位の全英9位につきました。アルバムの成功により初のUSツアー (73年11、12月)に出ることになります。


<リイシュー情報>

【EMI Premier 7243 8 35487 2 9(1996)】(2CD)
SPACE RITUAL EMI Premier CD

EMIよる公式初CD化。96年デジタルリマスター。デジパック。同内容の国内盤は2010年EMIミュージック・ジャパンよりSHM-CD、紙ジャケでリリース(TOCP-95062・63)。
LPのSide1-Side3までがDisc1に収められ、Side3の最後Brainstormまで完全に繋がった形になっています。Disc2はLPのSide4に加えて、以下のボーナストラックが収録。
・You Shouldn't Do That
76年のコンピROADHAWKSに収録されたライブテイクを再収録。72年SPACE RITUALツアー、12月30日ブリクストンでのライブ。
・Master Of The Universe
72年のGREASY TRUCKER'S PARTYに収録されたテイクを再収録。72年2月ロンドンでのライブ。
・Born To Go
上と同じ72年のGREASY TRUCKER'S PARTYに収録されたテイクを再収録。72年2月ロンドンでのライブ。


<国内盤>
「スペース・リチュアル(宇宙の祭典)」
【EMIミュージック・ジャパン TOCP-95062・63 (2010)】2CD

SPACE RITUAL EMI Japan CD
国内初CD盤。上記1996年リマスターのもので、ボートラも同じ。LPジャケをミニサイズで再現、国内初回LPに付属のポスター、本国のツアーパンフのレプリカも付属。SHM-CD仕様。

「宇宙の祭典」
【WOWOWエンタテイメント IECP-20244/245 (2015)】2CD

SPACE RITUAL WOWOW Japan CD
国内再発CD盤。原盤レーベルがEMIよりPARLOPHONEに移っています。カタログやライナーに2007 COLLECTOR'S EDITIONのトラックを使用していると記載されているのですが、それは誤りでボートラも含めて上の96リマスターと同じトラック構成ですので要注意。LPジャケをミニサイズで再現、帯は国内初回LPの帯をイメージ、国内初回LP付属のポスター、本国のツアーパンフのレプリカも付属。HQCD仕様。


COLLECTOR'S EDITION (2CD+DVD)
【EMI 0946 3 94071 2 5/HAWK SR4(2007)】
SPACE RITUAL United Artists UAD 60037/8

従来はLPのマスターテープをベースにしたものでしたが、このコンプリート版はマスターから作り直したもの。LP制作時に実際の演奏時間より短く編集されていたBrainstorm、Welcome To The Futureを完全版として収録し、アンコールのYou Shouldn't Do Thatを追加したコンプリート仕様。さらに本編には収録されていない別テイクのOrgone Accumulator、 Time We Leftの2曲も追加。DVD(PAL)にはSilver MachineとUrban Guerillaのプロモーション・フィルム、本編の5.1chサラウンドが収められた正にコレクター歓喜の内容。2007年リマスター、デジパック。国内盤は未発売。

一点不明な点があります。LPでは、長すぎて編集したとあるのは BrainstormとTime We Left This World Todayですが、 このアルバムではBrainstorm、Welcome To The Futureを完全版にしたとあります。EMIの仕事なので、Time We Leftを見逃すことはないと思うのですが、そうであればLP記載の内容は誤りで、実際はBrainstormとWelcome To The Futureが編集されたもの、と思われます。 とは言えTime We Leftの別テイクは倍以上の演奏時間ですので、日が違うとは言え5分程度だったとは考えにくいのですが。なおこの件は本国のファンがEMIに問い合わせたのですが明瞭な回答は得られなかったそうです。

その完全版2曲ですが、Brainstormの従来9:20に対して、完全版は13:46。間奏の続く7分台からさらに演奏が続き、Aメロが戻ってくるのは10:30頃。さらにLP版ではフェードアウトしてしまうミドルテンポのエンディングパートが2分ほど追加されています。
Welcome To The Futureは、中間部の語り部分が実際はもっと長かったことが判明。エンディングに向けてのタメが結構ある感じです。観客のアンコールの拍手や足踏みの中、従来版はフェードアウトしますが、ここではそのまま下記のアンコールにつながります。

ボーナストラックは以下。
・You Shouldn't Do That
なんと初出テイク。本編のWelcome To The Future終了後、アンコールの拍手に繋げて収められており、アンコールプレイを追加。従来のCD盤のボートラであるROADHAWKSに収録されたテイクは30日のブリクストンとされているので、 こちらは22日のリバプールのテイクと思われます。ROADHAWKSでのテイク6:55に対してさらに長い10:47。イントロが長め、中間のソロパートから後半のテンポアップしていくところも全体に引き伸ばされています。 当日のノリやコンディション次第で変わるところですね。終了後のメンバーのサンキュー声も収められています。
・Orgone Accumulator
こちらも公式初出。本編が22日か30日、いずれかの記載がないため、これもいずれかの日のテイク。一つ手掛かりとして、ニックが所有していたとされるブリクストンのテープを起こした(と思われる) アンダーソンがリリースしていた非公式盤SPACE RITUAL VOLUME2収録と同じテイクですので、これは30日、本編は22日と推測できます、まぁどうでもいいことですが。
・Time We Left This World Today
同じく公式初出、やはり上記同様30日とされるSPACE RITUAL VOL2収録と同テイク、本編テイク5:43に対して実に13:25という長さ。こちらも本編は22日と推測できますが、果たして短く編集されたのかは不明です。
・You Shouldn't Do That
こちらはROADHAWKS収録テイクと同じもの。30日ブリクストンでの演奏。


<どれがオススメ?>※2023年の50周年盤は現在分析、評価中です!
その収められた演奏の凄み、秀逸なカバーアートと相まって、英国アルバムチャートではホークス史上最高位の9位となったこの作品、様々なバージョンがありますが、私的オススメはやはりCOLLECTOR'S EDITIONです。ほぼコンプリートで当時のステージが 聴けるのは、嬉しいです。DVDがPALなので再生環境上不要であれば、その後DVD無しの2CD版がリリースされていますので、まずはコンプリート版を聴きたいということであれば、そちらをオススメします。


COLLECTOR'S EDITION (2CD)
【PARLOPHONE 5099943333721/HAWK SS4(2013)】
SPACE RITUAL PARLOPHONE 2CD

ジュエルケース、2007年リマスター。


関連情報

・SPACE RITUAL COLLECTORS EDITION(2007)のレビュー

・50周年記念クリアヴァイナル(2023)のレビュー

・国内初回LP-東芝音楽工業盤(1973)のレビュー

・国内再発LP-キングレコード盤(1982)のレビュー

・EXILESさんのレビュー

・国内初回CD-EMIミュージック・ジャパン盤(2010)のレビュー

・国内再発CD-WOWOWエンタテインメント盤(2015)のレビュー

・SPACE RITUAL VOLUME2レビュー

・SPACE RITUALツアー広告

レミー自身もとても気に入っていたというこのアルバム、レミー本人のサイン入りジャケ。
SPACE RITUAL Lemmy autographed

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2023/10/14 update


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