ホークウィンド・デイズ・コラム
2024年5月9日
マンダラバンド、特にデビューアルバムは感銘を受け大好きでした。キーボードによるオーケストレーション、テノールのリードボーカル、混声合唱、味のあるハードロックなギター、タイトなリズムセクションなどの構成要素が結び付き合った素敵なアルバムでした。最初聴いたのは下北沢のレコファンで、店内でかかっていました。その時に高校生くらいの人が「やっぱりマンダラバンドはいいよね。」と会話していました。当時はこんな感じでプログレが割と一般的な時代でした。
今年、そのマンダラバンドの1stアルバムと2ndアルバムのリマスターと主宰者デヴィッド・ロールによる新リミックス版がセットになったボックスセットが発売されましたので紹介します。
当時の思い出に戻ります。最初は国内盤LPを中古で入手、続いて当時新譜で出たばかりの2ndアルバムを輸入盤店で新品で購入しました。ただ1stアルバムは全体的に音のメリハリが弱い、解像度が今ひとつという感じがして、イギリス原盤をやはり中古で入手しました。音質は国内盤よりは若干良かったですが、それでもちょっと物足りない感はありました。
その後数年経ってからネット上でイギリスのとあるショップがプロモ盤を出していましたので、そちらを買い求めました。クリサリスの作成したプロモーションシートとバンド写真が添付していました。このバンド写真は初めて見る1stアルバム参加メンバーの写真でした。シートはクリサリスの蝶マークが切り抜かれた凝ったものでした。
シートの記載内容はバンドや各メンバーのプロフィールですが、国内のキングレコード盤のライナーに書かれていた情報はこのプロモシートの内容から引用されています。問題の音質ですが、盤は通常盤よりやや厚めの重量盤ですが、マトリクスは通常盤と同じPORKY PRIME CUTのハンドエッチングとA-2U、B-2Uで音質は特に違いませんでした。これ以上の音質を望むのは無理と思っていましたので、今回のリミックス版、非常に興味を持って聴いてみました。
やはり注目は曼荼羅組曲です。まず壮大な組曲の幕開けを彷彿させるイントロの尺が長くなっており、そこからの導入部分も僅かに長めになっており余裕を持たせた印象。バスドラやベースの低音がかなり強調されています。オリジナルでは低音が不足気味だったので、これは良いです。顕著なのはオリジナルでは演奏に埋もれがちだったリードボーカルを明確に立たせています。それによってボーカルの表情がきめ細かく伝わってきます。リードギターも同様にくっきり際立って主役感が出ています。バックの混声合唱団の歌声もより聴きやすくなっています。これはオリジナルでは際立っていたストリングスシンセを抑冴えたことによるところかと思います。逆にホーン系のシンセが聴きやすくなっています、この辺りは好みが分かれるところかなと思いました。もう少しストリングスの旋律は生かして欲しかったと思いました。
第2楽章はピアノのジャジーなプレイと軽快なリズムセクションが魅力的なパートですが、そのバックでアクセントになっていたオルガンの音量がかなり抑えられています。ここは個人的にはちょっと不満が残ります。
シンフォニックロック全開の第3〜4楽章はシンセの多重録音によって構築されたフルオケサウンドの高まりはより伸びやかに構成され、リードギターも芯のある音になっています。終盤の混声合唱を率いたリードボーカルもしっかり聴き取れるミックスです。
LPではB面となる4曲についても、リードボカールを立たせた聴きやすいミックスとなっていますが、人気の高いハードチューンDeterminationではまたもやオルガンの音量が抑え気味です。この曲はハードロックテイストのハモンドが肝だと思いますので、これはないかなと。
マンダラバンドの2ndはファンタジー絵巻となり、リリース時は連作となると告知されましたが続きませんでした。ジャケや原盤に添付されたブックレットなど力の入った作品でした。オーケストラは要所要所で鳴っていますが、今作では生のオケを付けています。各曲のストーリーの登場人物に扮したリードボーカリストは実に多彩で、これまた多彩なバックのメンバーとともに楽しめる内容となっています。最後、いかにも「つづく」という感じで終わってしまうのが残念です。
今回のリミックスは1stアルバムほどの大きな違いは感じませんでした。全体にコンセプトに沿った雄大な音風景を感じさせる、広がりのあるミックスになった感じです。改めて聞くと、このアルバムはかなりポピュラリティが高く、ロックアルバムというよりは映画のサントラ的で、随所にとても親しみやすく覚えやすいメロディが溢れていて、これを聴いていた頃の思い出も蘇ってきます。
リミックスに関してはデヴィッド・ロールの思い描いていた形になったということで、これはこれでありですし、逆にオリジナルの良さもあると思うので、それぞれに楽しむというのが良さそうです。
しかし個人的に思うのは、アーティスト本人が近年リミックスしたものは意外に良くないケースが多いということ。特にマイク・オールドフィールドの作品とか。こちらも長年聴きまくってきたので、どうしてもオリジナルの方が良いと感じてしまうのです。アレンジの肝になっている要の楽器が抑えられていたりとかすると拍子抜けするというか。逆にS.ウィルソンやJ.ジャクジクなどの第三者のリミックスの方が納得感ある気がします。まぁでも、ご本人のミックスという点では尊重すべきとは思いますが。。
マンダラバンドが新作のリリースなど再始動を始めた時期に「RESURRECTION Mandalaband I & II」というアルバムをリリースしていました。Remixed & Remasterというサブタイトルが付いており、内容もリミックスされたものでした。曼荼羅組曲でのイントロの長尺化、リードボーカルの明瞭化は今作「LEGACY THE STORY OF MANDALABAND 1975-1978」と同様です。低音域はそこそこ強調されているものの今作ほどではありませんでした。 今作ではかなり抑えられていたオルガンはそれなりに聴こえています。オリジナルのミックスに比較的忠実な印象。ただし全体の明了度という点では今作の方が良いかと思います。
2024/6/18 update