ベースは名うてのセッション・マン、クマ・ハラダが全曲参加!ホークス関連作品で日本人が参加しているのは嬉しいですね。その他では、P.フロイドのツアーギタリストだったスノーウィ・ホワイト、ハイ・タイドのピート・パブリがチェロで参加しています。
曲調はホークスのスペイシーな感覚とは程遠いR&B、R&R中心のくだけた内容。ムアコックのファンタジーな世界を想像していたので、初めて聴いた時はガックリしましたが、純粋な英国産R&Bと思って聴くと、その後なかなか味があるように思えてきました。ムアコックの歌唱は例によって危なっかしいですけど、クマ・ハラダの安定感のあるベースに支えられたリズムはしっかりしていますし、ハウスのキーボードもいい感じで、意外にメロトロンの使用率が高い!のもグッドです。とは言え、やはり本物のR&Bに較べたら酷ですけど。意外なところでは、Song For Marlene の作詞がサム・シェパード。俳優として結構著名な彼ですが、詩人や脚本もこなす人で、当時 DEEP FIXのメンバーである S.ギルモアと仕事をしていたことで、彼の詩が採用されたそうです。どうでもいいコトですが、彼の主演作 RIGHT STUFF は、カルバートの曲と同じタイトルですね。
ニック(左)とムアコック。当時の写真でムアコックとホークスのメンバーが写っているものは珍しいです。UKのファンジンから拝借しました。
このアルバムをリリースしたのち、時折集まってはプレイをするという活動だったようです。78年にはジェリー・コーネリアス・シリーズの THE ENTROPY TANGO の出版に伴い、その音楽化が図られ、P.パブリとデモが行われましたが、作品化には至りませんでした。のちにそのデモは HAWKFAN 12 に収録されました。先にお蔵入りしていた Dodgem Dude/Starcruiser は80年に、FLICKNIFE より晴れてリリースされました。小説と関連した曲制作は続き、82年には BROTHEL IN ROSENSTRASSE が FLICKNIFE よりシングルでリリース。同82年には Good Girl, Bad Girl 及び Time Centre が録音され、この2曲は FRIENDS AND RELATIONS に収録されました。この頃はP.パブリとの共同作業によるデモをたくさん収録していたようで、その未発表デモを数曲聴いた感じでは、基本的にパブリのギター、チェロをベースにムアコックが歌うというもので、R&B色は後退しカルバートの後期にあるような内省的な作風になっていました。
執筆活動に多忙で、なかなか音楽活動は行えないようですが、機会があればまた作品を作りたいと語っています。
Dodgem Dude/Starcruiser
FLICKNIFE FLS 200 (1980)
ここでのベースはG.カルノック、ドラムはキング、サックスにはニックさんが参加!
Brothel In Rosenstrasse/Time Centre
FLICKNIFE EJSP-9831 (1982)
限定500枚で通し番号付き。インナーの歌詞カードには、御大の直筆サイン付き!(下)
アルバムは95年にUKのDOJO/HAWKDISCからCD化されました。ボーナス・トラック4曲が追加されています。シングル、Dodgem Dude/Starcruiser と Brothel In Rosenstrasse。もう1曲は Candy Floss Cowboy (Demo) で、当時ムアコックが気に入らなかったので、アルバムに収録しなかったテイク。ハウスのメロトロンが活躍するいい曲だと思うのですが、ここで発表されて良かった〜。全く同じ収録内容でUSAの GRIFFIN よりボックス・セットもリリースされました。
MICHAEL MOORCOCK & THE DEEP FIX
THE NEW WORLDS FAIR
DOJO LIMITED DOJO CD88 (1995)