その後レーベルを CHARISMA に移し、77年に2nd、
INSTINCTS をリリース。ここではドラム&パーカッションにモーリス・パート、サックスにメル・コリンズ(1曲のみ)を招き、ギタリストも参加するなど、ロック寄りの作品に仕上げています。
モーリス・パート起用についてワグナーは「あの頃世界一のパーカッショニストだった。彼とは王立音楽院(パートも同学院生)時代から親しくて、それで起用したんだ。」と語っています。全体にカラフルなシンセワークが印象的なアルバムです。ちなみに1曲目のみ、ミックス・エンジニアでスティーヴ・リリーホワイト(のちにニュー・ウェーブ系のプロデュースで有名になりますね)のクレジットがあります。
さらに翌年 THE LAST INCA というコンセプト・アルバムをリリース。インカ帝国の興亡をテーマに描いた作品でブックレット付属、ジャケ・デザイン制作ヒプノシスという気合の入った作品でした。日本でも折りからのシンセ・ブームで、日本フォノグラムより国内盤がリリースされました。雑誌「フールズメイト」でもレビューで取り上げられ、高評価されていました。前作に引き続きモーリス・パートが全面参加したこともあり、リズムの比重が高くなっています。数多くのセッションで有名なパート、いつもパーカッショニストとしての脇役ですが、ここではメインゲストとしてドラムも存分に叩いているところがポイント。ギタリスト、ベーシストも参加していることで、バンド的な色が濃くなり、まとまり感が出て成功したようです。
この後再び、カルバートとの共同作業が行われます。79年にリリースされたソノシート・シングル ROBERT CALVERT and the 1st
X1 名義の CRICKET STAR。「オレはクリケット・スターになりたかった」という、ひょうきんな小曲でワグナーの演奏もそれに合わせたポップなレゲエものでした。歌詞にレゲエとあるように、カルバートはレゲエとして作ったと語っています。クリケット大会に合わせて制作されたそうですが、大会はキャンセルされたとのこと。
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INSTINCTS
CHARISMA CAS 1124 (1977)
THE LAST INCA
CHARISMA CAS 1135 (1978)
のちに上2枚のLP作品を2in1にしたCDがリリースされました。一部トラックの差換えが行われています。
INCA GOLD
THE MUSIC SUITE MS108 (1990)
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ROBERT CALVERT and the 1st X1
CRICKET STAR
WAKE UP WUR 5 (1979)
ソノシートのためか少しでも針圧が高いと針で止まってしまい、ターンテーブルの上で空回りしてしまうというシロモノ。片面1曲のみ。
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<2004年8月追記>
2004年7月に上記 Cricket Star リリース25周年記念としてA.ワグナーが自身のレーベル
MEDIA QUEST より同曲の自主制作CD-R限定販売しました。マスター紛失のため、上記ソノシートからの盤起こしです。おそらく数十枚程度の制作。
このリリースに伴い、A.ワグナーは25年前のことを以下のように回想しています。
79年、オックスフォード郊外にある私の自宅にロバートは頻繁に出入りしていた。ちょうど私がプロデュースしていた DISCO DREAM AND
THE ANDROIDS という作品にロバートが参加しており、彼はその作詞や演奏を行っていた。
その日、いつものようにキッチンでロバートとお茶をしていた。数年前にロバートの熱心なアイデアでクリケットをテーマにした曲 Cricket Star
と Howzat の2曲を、私とロバート、元ティラノザウルス・レックスのスティーヴ・トゥックと制作していた。プロジェクト名を THE 1ST ELEVEN
と名付けていた。ロバートの所属していた UNITED ARTIST はリリースに乗り気でなく、ロバートは不満だった。ティーが3、4杯目にさしかかる頃、ロバートは、近々ウエスト・インディーズで開催
されるクリケット大会を見逃す手はないと言い出した。私はマスターテープはまだ所有しているが、かなり悪い状態だと彼に告げた。そこで、再録をすることに決め、オリジナルのバックトラックを残しながら、新たにいくつかのトラックを追加した。私の自宅スタジオで、その晩作業は完了し、翌日にはミックスダウンを行った。
WAKE UP RECORDS というレーベルを設立し、 Cricket Star をソノシート盤でリリースすることに決めた。ロバートはオックスフォードに出掛け、しばらくするとクリケットのユニフォームに身を包み、装備一式手にして戻ってきた。我々は近くの芝生に行き、私は数本のフィルムをソノシートのプリント用に撮影した。私は初回プレスを1万枚としたが、そのコストは私には手一杯で、ロバートはこれをクリケット大会の会場脇で売ろうと計画し、そこでシングルを売ろうと期待していた。しかし例によってロバートにいつもつきものの、とんでもないハプニングによって確かなものでなくなってしまった。その年、ウエスト・インディーズのクリケットツアーは中止になってしまった。
結局2000枚程度のセールスにしかならず、 8000枚はオックスフォードのゴミに。数年後私がウエールズに移る前の話だ。
しかしながら、この25年、Cricket Star は世界中のラジオ局で時々オンエアされ、多くの方から再リリースの予定はないかと尋ねられた。 遺憾ながらオリジナルのマスターテープは紛失しており、もう1曲の
Howzat も残っていない。手元に状態の良いソノシートから起こしていたデジタルソースがあったので、クリーンナップして仕上げた。25周年記念として、またロバートもきっと喜んでくれていると思う。
ロバート・カルバートは非凡な才能の持ち主で、ユニークなキャラクター、コメディ詩人、ロックスターだった。大変良い友人でもあった。このシングルは彼の回顧であり、賞賛すべき功績、その人生に捧げた。
<管理人注釈>文中で述べられているカルバートと制作していたという DISCO DREAM AND THE ANDROIDS という作品は、WAKE UP よりリリースされていたようです。元ティラノザウルス・レックスのS.トゥックが参加していたとは、ちょっと驚きです。彼もすでに故人ですね。 |
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ROBERT CALVERT and the 1st X1
CRICKET STAR
CD digitally re-mastered at Media Quest from the original flexidisc by
Adrian Wagner (2004) |