Compact Disc
CHERRY RED - CDBRED700 (2017)
|
前年のTHE MACHINE STOPSの成功からその1年後に早くも新作がリリースされました。前年は秋以降ギグがなかったので、その間にじっくり制作されたと思われます。THE MACHINE STOPSツアー後、ナイル・ホーンが離脱したようで、ベースはハズ・ウィートンが担当。彼のプレイはとてもドライブ感の強いもので、ブロックはチャドウィック共々、彼のプレイに触発されたと語っています。若い頃のレミーのようだと最大限の賛辞をコメントしています。その言葉にあるように、前作の構築的なサウンドスタイルからドライブ感を押し出したパワフルな志向に変化。ギター、ベース、ドラムスの3ピースを核としたアグレッシブな演奏が特徴的。
アルバムコンセプトは前作の続編とされました。THE MACHINE STOPSの原作には続編はありませんので、今作はホークスの解釈による続編ということになります。アルバムカバーは森の中のストーンサークル、ジャケ内側には緑に覆われた都市の情景が広がっています。前作のエンドでテクノロジーの崩壊を経た世界がその後、自然力によって緑に覆い尽くされ、そこには人間を超越した自然のスピリッツが支配する世界となった、というようなストーリーかと思います。
Into The Woods 前作の最後に現れた悲哀感のある印象的なパッセージに似たアコピの演奏から始まり、アルバムコンセプトが前作の続編であることを告げます。ブロック作。14秒ほどで突如ミドルテンポの重い5拍子リフが開始。1分強の長いイントロでウィートンのベースの牽引力を感じさせます。リードボーカル、一瞬これ誰?と思いますが、すぐにブロックだと気がつき、エフェクトを通した濁声でハード感を増長しています。緑の森の奥から手招きをするおどろおどろしい森の精を演出しています。中間部のワウをかけたブロックのギターソロもかなり荒々しい。
Cottage In The Woods 引き続きブロックのペンによる曲、鳥のさえずる森の中SE描写、コテージに囚われた人間がスローバラードで歌われます。
Have You Seen Them? ブロック/ウィートン/ディブス/チャドウィック共作。メロディアスな曲でアルバムに先行して動画が公開されました。ボーカルはチャドウィックとディブス、曲調が明るくなり流れるようなコーラスパートを持ったミドルテンポのハードロック。中間部リフが繰り返され、ウィートンのベースとそれに乗ったブロックのギターソロが展開、7分強。ギタリストを触発するようなベースプレイは確かにレミーのそれと似ています。
Space Ship Blues 冒頭からカントリー調のバンジョー、バックにはバイオリンも加わり、とてもポップ。ブロックのバスキング時代を思い起こさせます。
The Wind 森の中のSEとパーカッションをバックにブロックの朗読。このような情景描写のパートを挟んでいく構成はブロックが好んでいると答えていました。
Vegan Lunch ベジタリアンのブロックならではの歌詞。中間部の流れるような間奏が美しい。4拍子ながらシンコペを使ったリフと流麗な部分との対比が楽しいトラック。
Magic Scenes イントロのシンセの高速アルペジオの上でブルースが展開、泣きの強い曲ですがストリングスに頼らず、ギター中心に盛り上げています。
Darkland 前曲の終奏的なトラックでアコギでメローなメロディを奏でる美しい小曲。
Wood Nymph、流麗なAメロに対して、Bメロは重々しいリフ。ブロックらしい展開。
Magic Mashrooms 3ピースの演奏とオルガンによるタイトな演奏。中盤から後半にかけてのリフがDuglas In The Jungleを思い起こせます。攻め立てるようなリフの応酬、最後ライブ風歓声が入ってきて終了。この終曲のアグレッシブさが正にブロックの言うウィートンの効果かと思います。
バンドはアルバムリリース前後で、アコースティックセットを含むツアーを実施。うち、ラウンドハウスのギグは映像収録され、11月にリリースされます。
・LP盤のレビュー
・リリース時の当サイトのニュース記事一覧
オリジナルUK盤&日本盤ディスコグラフィ2 Compact Disc 2017-2018に戻る
2018/07/24 update