Hawkwind Daze Logo

Compact Disc

Top > discography2 > 2020-2022 > SOMNIA

HAWKWIND | SOMNIA

CHERRY RED - CDBRED845 (2021)

前作は50周年記念ライブ、その前はHAWKWIND LIGHT ORCHESTRAでした。バンドのスタジオ作としては19年の「オール・アボード・ザ・スカイラーク」以来2年ぶりとなる作品。コロナよりロックダウンなどがあり2020年の3月くらいから、メンバーが集まることもできないなか、データのやり取りで完成させたアルバム。それぞれが自宅でじっくり向き合ったためか、全体に内省的でデリケートなタッチとなり、ホークスらしいパワフルさが抑えられた印象。

Hawkwind / Somnia -Cherry Red CD
デジパック、ブックレット
Hawkwind / Somnia -Cherry Red CD

  1. Unsomnia
  2. Strange Encounters
  3. Alcyone
  4. Counting Sheep
  5. China Blues
  6. It’s Only A Dream
  7. Meditation
  8. Sweet Dreams
  9. I Can’t Get You Off My Mind
  10. Small Objects In Space
  11. Pulsestar
  12. Barkus
  13. Cave Of Phantom Dreams

まず今作の印象は長年カバーアートを担当してきたマーティン・クレルからチェリー・レッドの他のアーティストの作品も手掛けているプロのグラフィック・デザイナー、メリエル・ワイズマンによるもので、従来と何か違うニュアンスを感じます。バロック風の絵画のコラージュの様なデザイン。タイトルのSomniaはラテン語の「夢」であり、人間の睡眠に関係する様々な事柄を扱った内容を端的に表現している様に見えます。
メンバーはデイヴ・ブロック (G/B/Key/Vo)、リチャード・チャドウィック (Dr/Per)、マグナス・マーティン (G/B/Key/Vo)の3名。ナイル・ホーンは抜けている様で、同年のHawkfestにも参加していませんでした。バックボーカルに2名の女性がクレジットされています。
Unsomnia イントロから従来と異なる曲調で、あれ?って思わせます。ミドルテンポのベースリフにマグナスのボーカル。作曲も本人。ブロックのサスティンの長い、ディストーションギターが効果音の様にかぶさってくるあたりからホークスらしさが出てきます。ひたすら繰り返しながら、ギターの長いトーンに電子音、キーボードが厚身を増してくると、やっぱりホークス。後半マグナスのボーカルも熱を帯び、ブロックのギターソロも若干プレイされ、その後チルアウトし、シンセの重厚なパッド音に低いバスドラの響き。鳥の声のSE。アコギのつま弾きが流れてくるあたりは、とても美しい情景。ラジオの音声の様な人声が流れています。まさに夢うつつ、夢か現実かの境目を漂うな感じです。マグナス作曲らしい独特なコード進行で、らしくはないのですが、これが今のホークス。今回マグナス単独作曲は3曲。オープニングと終曲を飾っていることから、ブロックさんは相当に彼の曲を気に入っていると思います。
Strange Encounters 激しいリズム、ブロックさんのいなたいギターが炸裂する従来路線。インストですが一部ブロックのボイスが入ります。後半サンプリングされたストリングスによるリズミカルなリフ、最後はシンセパッドの短い演奏で次曲につながります。
Alcyone ギリシャ神話のアルキュオーネのこと、歌詞はその物語を歌ったものです。マグナス作のスローテンポの曲で、話は悲劇ですがあまり感傷的なアレンジではなく、いつもの彼のスロー曲のムード。
Counting Sheep 続くブロック曲は、また前曲に対して動。ミドルテンポに単調なフレーズ、繰り返される「闇が夢のマントを広げるように」というコーラス、そこにギターのアドリブが絡む。不眠の苛立ちを表現している様な曲。コーラスには女性ボーカルが含まれています。
China Blues 電子音によるイントロ、シンセベースの反復音にワウを効かせたブロックのアドリブギター。シンセベースのリズムと同期するカッティングギターもワウがかけられ、淡々と進行する中ブロックのボイス。不意にリフが止まり、電子音の情景。そしてリズムが再開、ドラムスが加わり呪術的なボーカルのリフレイン。これもホークスらしいブロック作トラック。ベルの音で次曲へ。 It’s Only A Dream 先行公開された最もシングル向けの曲調。イントロはブロックギターによるバラード風メロからスタート。リズムが入り流れる様なホークス風ポップロック。このギターの音、ブロックさんならではですね。スローなブリッジかと思ったら、そのまま終了。もう少し長くても良い様な気がしますが。終盤女性ボーカルが聞こえます。
Meditation ラーガを思わせるドローンな背景音をバックにアコギのアドリブ。ブロック/マグナス共作。チャドウィックもパーカッション類でアドリブに参加します。終盤シンフォニックなシンセ音で次曲につながります。
Sweet Dreams クワイヤーのイントロから、ストリングスによるボレロ風リズムが始まり、ブロックの語り。タイトルとは裏腹に不安感を助長する小曲。ここからブロック作曲が続きます。
I Can’t Get You Off My Mind いきなりブロック風バラード。歌詞の内容も未練がましい男の想いを歌ったもの。アルバムコンセプトとは少し違う印象です。ブロックのソロアルバムにありそうな曲。
Small Objects In Space 電子音から始まりますが、リズムが入ってくると前曲の感傷的なムードを引きずったバラードが続くかと思うと、電子音だけになり、ピアノのイントロ風な演奏からリズムアップしたブルーズな曲調に変化。ブロックのアドリブ、マーティンのピアノと相まってリラックスしたR&B。曲調の変化していく様が、夢うつつの取りとめもない感覚を表現している感じです。
Pulsestar 遠くに鳴る電子音。深宇宙の彼方を思わすトラック。
Barkus エスニックなドラミングにブロックの朗読、シンセ・ストリングスをバックにメローなリードギターが弾かれますが、ふっと途切れてアナウンスと電子音で暗闇に。
Cave Of Phantom Dreams シンセのパッドが流れ、睡眠に誘うかの様なマーティンの朗読。電子音が高鳴り、中盤からシンセのシークエンスが始まるものの、そのままフェードアウト。え、これでおしまい?という呆気ない感じがあります。

今作は夢ににまつわる題材を扱ったということで、悪夢とか夢うつつを思わせるミュージック・コンクレート的な手法が以前よりさらに顕著に出ていること、これぞホークウインドという推し曲がほとんどないこと、そのため構成にドラマチックさが薄いなどの印象があります。スタジオにメンバーが集まって、一斉に音を出す様な場面がなかったことも影響している様に思います。ホークスには、コンセプトに大きく左右されず、シンプルに楽しめる作品を期待したいところです。


関連情報

・同アルバムのLP盤のレビュー
・このアルバムの国内盤のレビュー


オリジナルUK盤&日本盤ディスコグラフィ2 Compact Disc 2020-2022に戻る

2021/09/03 update


HAWKWIND DAZEトップページに戻る