ホークウィンド・デイズ・コラム
2019年2月17日
ホークウインドの初期と同時期に活躍していたケミストリカルなバンド、サード・イアー・バンド。サウンドトラックとしても有名な同バンドの3rdアルバム「マクベス」に参加していた元ハイタイドのサイモン・ハウスがホークスに参加したこともあり、音楽の方向性は異なりますが関連バンドでありますね。当時日本では両者のアルバムは東芝音楽工業からリリースされており、進歩的かつ前衛的なアーティストとして紹介されていました。サードイアーの一連のアルバムカバーは中世ヨーロッパの魔術を象徴した神秘的なもので、そこも魅力でした。
アルバムで伺える楽曲は、グレン・スゥイーニーのひたすら繰り返すタブラの単調なリズムとそこにかぶさるポール・ミンスのオーボエ、弦楽器によるアコースティックな音色、ラーガの音階やヨーロッパの民族音楽や舞踏曲の旋律をミックス、瞑想的な音世界を描いていました。通常のロックミュージックとは異なり、インプロ主体、ミニマル的でもあり、現実世界では触れることのできない世界を垣間見せるという点では、どこか初期ホークスとの共通性を感じました。
この2ndアルバムはタイトルにはシンプルにバンド名のみを冠し、四大元素を各曲のタイトルに付けた彼らの代表作というべき作品。アルバムカバーは四元素をイメージする大地と積乱雲の風景写真を紫色のモノトーンで表現し、LPサイズだと幻想的で魔術的な香りが漂う素晴らしいアートワーク。
今回の企画盤はこの時期のアウトテイクスをたくさん収録していることが嬉しいです。一部はすでにリリースされているサントラの「アベラールとエロイーズ」のトラック、GONZOからリリースされたNECROMANCERS OF THE DRIFTING WESTに収録されていたジョン・ピール・セッション以外はおそらく初出。70年11月のアビーロードスタジオのセッションでは電子音が流れる中をコーラスが呪術的に歌われるとか、エレキが加わっている演奏とか、タブラではなく普通のドラムによるロックバンドっぽい演奏など、今までのアルバムだけでは伺い知れなかった側面が浮き彫りになっています。BBCのスタジオライブなどはモノラルですが、全体に音質がとても良く50年近く前のテイクとは思えない安定した音質も良いです。今回発掘されたアウトテイクスは、サード・イヤー・バンドの公式アルバム以外でのパフォーマンスがバラエティ豊かで挑戦的な姿勢であることを実感できるもので、このバンドの再評価につながるものだと思います。なお次作「マクベス」も未発表トラックを含めたリマスター盤が同じくESOTERICからリリースされています。そしてバンドの新作の準備も進んでいるそうです。
2019/02/17 update