Compact Disc
CHERRY RED - CRCD3BOX190 (2024)
前ライブ作『ウィ・アー・ルッキング・イン・オン・ユー』から2年でリリースされたライブアルバム。名門ロイヤル・アルバート・ホールの出演は2019年に続き2度目、チケット・ソールドアウトした公演。アーサー・ブラウンが前座でホークスのステージにも一部参加。定番人気ナンバーと新作からの選曲。やはり、ギター二人の5人体制が一番ホークスには合ってるとつくづく思います。参加メンバーは2021年からの体制、デイヴ・ブロック(G/Vo)、リチャード・チャドウィック(Dr/Vo)、マグナス・マーティン(G/Vo)、ティム・ルイス(Key)、ダグ・マッキノン(B/Vo)。
DISC ONE
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DISC TWO
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DISC THREE
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冒頭、アルバム『STORIES FROM TIME AND SPACE』のジャケを思い起こさせる時計のような効果音が流れます。
Levitation オープニングはブロック作の定番ハードナンバー。同題アルバムから。前ライブアルバムにも収録されていましたが、同様のアレンジでいきなり盛り上がります。
You’d Better Believe It 『永劫の宮殿』(1974)収録曲、ブロック作。近年では2010年代から時折レパートリに入れてきています。イントロのシンセ音、当時のサイモン・ハウスが出していた音色に似せています。ティム・ルイスはホークスのファンであったことから、以前のニュアンスを継承しながら自分のカラーを加えることに注力していると語っており、その温故知新なスタンスはファンには嬉しいです。中間部はリラックスしてレイドバック、徐々に上げていくアレンジが良いですね。リードボーカルはブロック。
Psychedelic Warlords 同じく『永劫の宮殿』のオープナー。イントロのスイープ音からバックのメロトロンも再現。この曲のライブをまともなアレンジで聴くのは初めてですね。かつてのズンドコリズム版が懐かしい。間奏部は繰り返すリフにメロトロンが響き渡り、『宇宙の探究』(1971)の「夢幻の世界」に移り変わります。リードボーカルはブロック。そしてAメロに回帰。毎年オールドナンバーをいろいろなアレンジを聴かせるホークス、楽しいですね。
Arrival In Utopia マーティンの挨拶を挟んで、電子音のイントロからブロック作イケイケ定番曲。『チューズ・ユア・マスクス』(1982)から。マッキノンのブリブリベースが生かされてます。間奏はそのベースが牽引するリフにシンセシークエンス、ブロックの語りが入ります。
Rama The Prophecy コンサート時点で最新作だった『ザ・フューチャー・ネヴァー・ウエイツ』(2023)の中でブロックの諸行無常感が現れ個人的に最も良いと思った曲。。ライブでも映えますね。
The Beginning 前曲同様当時の新作からのマーティン曲、ボーカルも本人。イントロの女性のアナウンスはスタジオ版と同じもの。前半のエレクトロから後半のアコースティックなパートへの変化が特徴的な曲。こういう曲はマーティンのバックボーンにビートルズを感じます。
Spirit Of The Age 定番アンセム曲。『クォーク・ストレンジネス・アンド・チャーム』(1977)からのカルバート&ブロック作。リードボーカルはブロック。今回はティム・ブレイク在籍時のシンセ・シークエンス&ストリングスが再現されています。終盤のシンセソロが良いです。
Underwater City マーティン作の新曲。この時点ではまだリリースされていない『STORIES FROM TIME AND SPACE』(2024)に収録されているマーティン作曲の寂寞感が漂うインスト。バックはスタジオ版同様メロトロンです。終盤のアレンジは次曲のイントロのコード進行に変化します。
Assault and Battery〜The Golden Void 『絶体絶命』のオープナー。前曲から続いてメロトロンを使用したイントロ。この曲でのメロトロンサウンドはライブでは初めて、最高です。終盤ギターソロの後、テンポアップし諸行無常感が炸裂。ムアコックのヒロイック・ノベルに漂うあれと重なります。作曲、ボーカルともブロック。一点だけ、Golden Voidのイントロのシンセソロも再現して欲しかった。。
Peace ルイス作ピアノソロ。次曲とのつなぎの序曲的小品。前ライブアルバムのテイクから若干アレンジが異なっていますが儚なさと一抹の感傷感が良いです。
Right To Decide 定番溌剌曲。『エレクトリック・ティーピー』(1992)から。リードボーカルはブロック。アレンジは若干変更あり、前ライブアルバムでは前曲とのつなぎにシンセシークエンスがありましたが今回は無く、1コーラス目の後にギターソロが追加されています。終盤はシンセソロ、ギターソロが続き3コーラス目が入ります。
10th Second of Forever 『宇宙の祭典』(1973)からカルバート作のポエトリー・リーディング。ゲストのアーサー・ブラウンによる朗読。
Born To Go〜Star Explorer 前ライブアルバムにも収録されていました。この2曲を続けて演奏。アレンジもほぼ一緒で、途中You Shouldn't Do Thatのリフ、H.マンシーニの「ピーター・ガン」のベースリフになり、感傷的なStar Explorerのパートに変化します。最後はBorn To Goに回帰。前半はカルバート&ブロック作、後半は元メンバー5人の共作。
Brainstorm〜Neurons 勢いを維持したまま定番中の定番ナンバーへなだれ込みます。電子音の中、あのギターリフを皮切りに突っ走ります。ターナー作でリードボーカルはブロック。『ドレミファソラシド』(1972)から。この2曲の組み合わせも前ライブアルバムと同じですが、Neuronsのアレンジが全く異なりGolden Voidの伴奏進行は無くなり(あれ良かったのですが、今回独立してGolden Voidが演奏されているからかと)、シンセシークエンスを軸としたミニマル曲となっています。これはこれでカッコイイです。5人の共作。
Black Corridor 『宇宙の祭典』から。カルバートがムアコックの同題小説にインスパイアされて作ったポエトリー・リーディング曲。ブラウンが朗読。中盤からリズムが入りBrainstormに戻るということで前2曲と繋がった構成。
Master Of The Universe〜Welcome To The Future この組み合わせは前回RAHに出演したときのラストナンバーと同じです。ターナー作、ボーカルはブロック。『宇宙の探究』より。ブロックは最期まで袂を分けていたターナーですが、「ブレインストーム」「宇宙の支配者」というホークスのアグレッシブさを象徴する曲はターナー作なんですよね。ホークスのトリに相応しい曲はやはりこの組み合わせ(Master〜Welcome)ですね。
DISC3はREHEARSALSとなっており、スタジオでのリハーサルを収録したものです。
Frozen In Time 現時点での最新アルバム『STORIES FROM TIME AND SPACE』の終盤を飾るマーティンのバラード。アルバムでは3分少々ですが、歌唱パートの後に長いギターソロが続き最後に歌唱パートに戻り7分超えとなっています。2024年のホークスのステージではレギュラーナンバーとなっていました。
Practical Ability 14分に渡る長尺ジャム。このディスクのスリーブにブロックのコメントが記載されていますがリハでは長いジャムもよくやってるそうです。ミドルテンポで一定のベースパターンの上でギター、シンセがソロを取っていきます。中盤にAssault & Battery的なコード進行の盛り上がりがあり、また元にベースパターンに戻り、その後テンポアップしていきます。なんか、WEIRD TAPESのデモ群を彷彿として楽しいです。楽しんでいるメンバーの顔を想像しつつずっと聴いていられます。
Lost Chances タイトル見て、え?これってあの曲?そう、アルバム『ソニック・アタック』(1981)収録のブロック曲。ライブでは今までやったことがないはず。リハの成果として2024年のステージではレギュラーナンバーです。改めて良い曲と認識。曲はそのまま次トラックに繋がります。
Second Chances 前トラックから続いてジャムに突入。ワウギターやシンセのアドリブが続きます。これぞホークスって感じのジャム。
Underwater City さらに繋がって、このナンバーに。ライブ本編でもやってますし、お気に入りですね。マーティン流諸行無常。2024年のギグでも引き続き演奏されていました。
Mask Of Morning これも、あの曲?はい、アルバム『エレクトリック・ティーピー』のあの曲です。この曲はアルバム・リリース前後の91〜92年にステージでもやったことがあります。疾走感のある歌唱パートに続いてミドルテンポジャムに突入。一部幻覚的なイメージを持たせたジャムから歌唱パートに戻り、またジャムに入っていくという構成。いやこれも良いですね。これも2024年のライブでは演奏していました。
なんかリハーサル・ディスクがやたらとツボに入るというか、楽しめました。もちろんライブ本編は54年目のバンドとは思えないアグレッシブな演奏で素晴らしいものです。
このところアーカイブリリースでのライナーに起用されているロブ・ゴッドウィン氏のライナーは、リハから会場への移動まで含めた密着レポートされている臨場感のあるものです。メンバーへのインタビューや長年のスタッフであるキース・バートン(以前サポートギタリストもしてたことがあります)やレーザー光線技師ブライアン・ベニトンなどへの緻密なインタビューなど興味深いです。チャドウィックのコメントで事前にモニタリングシステム故障で機器の総入れ替えがあり、新システムで相当苦戦したがチーム全員の働きで克服できたなどの話も出ています。
今作も楽しめる内容ですので、ファンには絶対おすすめです。って毎回書くのもどうかと思いますが、、
・2024年時点での最新スタジオアルバム『STORIES FROM TIME AND SPACE』(2024)のレビュー
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2024/12/30 update