Analog Disc
UNITED ARTISTS - UAG29672 (1974)
Side 1
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Side 2
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メンバーが好んでランチをとったポートベロのカフェMOUNTAIN GRILL RESTAURANTとクラシックの組曲「ペール・ギュント」の一曲In the Hall of the Mountain King(山の魔王の宮殿)と掛け合わせたタイトル。ボウイやボランも顔を見せたというこのカフェ、カルバートがブロックと初めて会った場所でもあるそうです。インナー・スリーブにはその写真も掲載されています。このカフェは後になくなっています。
SF的で想像をかき立てるジャケットに象徴されるかのように、加入後初めて録音に参加したサイモン・ハウスの重厚なキーボードとバンド自体の整合感の高まりが融和され壮大な世界観を描き、メローさ、メロディアス感が増加。ある意味では幾分かノーマルな音楽に近づいたホークス。私の個人的な主観ですが、現在に至るまでのホークスの楽曲の方程式はこのアルバムで決定されたと思います。この作品の結果、それまでの「全て」であった「混沌とした危うさ」をスタイルの「一部」として取り込むことになったことで、楽曲のコントロールをするようになったと思われます。それゆえ長きに渡ってバンドを続けることができたのではないかと思うのです。
デイヴ・ブロック(G/Vo)、ニック・ターナー(Sax/Fl/Vo)、デル・デットマー(Syn)、サイモン・キング(Dr)、レミー(B)、サイモン・ハウス(Key/Vl)の6人によってレコーディングされました。
オープニングのPsychedelic Warlordsは、SPACE RITUALで一区切りつけたバンドの新たな方向性を明示。イントロのシンセの低音スゥイープに続くギターカッティング後、リズム隊のフォローとともにメロトロンのストリングスがつつみ込むように流れ出し、ホークスの新局面が露呈されます。反復リフで突っ走るのですが、メロディアスであり、いわゆるロック的な格好良さが感じられます。一般的なロックミュージックに近づいたという印象ですが、終盤のアドリブパートはボーカルに変調をかけたサウンドなど従来のカオスな演奏。作曲はブロック。
ホワイトノイズを挟んで、続くWind Of Changeはオルガンにメロトロン、ハウスのバイオリンとホークス初のシンフォニック・テイストを描き出します。作曲はデイヴですが、壮大なイメージに仕上げたのはハウスの手腕によるところ。バイオリンの奏でるメロディは感動的。主旋律に加えて、対位旋律のバイオリンが多重録音されています。
前曲の余韻を受けながら、作者であるニックのリードボーカルによるD-Riderは、マイナーのAメロから一気にメジャー転調するサビが印象的。メロトロン混声コーラスに大胆なフェイズ・エフェクトをかけ電子音と相まってサイケ感を演出。D-Rider のDはDragonとのこと。歌詞には関連性を感じませんが、ムアコックのエルリックが思い浮かびます。
Web Weaver ブロック作。アコギの晴れやかなストロークにピアノ、メロディーはIN SEARCH OF SPACEのYou Knpw You're Only Dreamingのイントロの半音下がり部分をセルフカバー。電子音が舞う中リズムの入る後半はさらに明るくなり、ワウやフェイズのかかったギターがアドリブ、そのままフェードアウト。LPのA面は曲順や構成が流れをもっており、組曲のような印象があります。B面はテイストの異なる曲を配すことで、バラエティ感のある構成としています。このアルバム構成がその後のホークスのパターンとなっていきます。
B面1曲目You'd Better Believe Itと終曲Paradoxの2曲は74年1月に収録されたライブ・テイク。このテイクはエドモントンのサンダウンで収録されたもの。ハウスのオーディションを兼ねたギグでした。You'd Betterではハウスのバイオリンがフィーチャーされています。
Hall Of The Mountain Grill アルバムタイトルナンバーはハウスによるピアノとメロトロン全開の無常観が漂うクラシカルな曲。このアルバムジャケのイメージと合致します。
Lost Johnny レミーの作曲で、ギターも本人がプレイしたヘビーテイストな曲。
Goat Willow デットマー作の小曲。シンセの持続音にハープシコード、ニックのフルートによる牧歌的な曲。
Paradox ブロックお得意のメローなバラードから一転、リフレインするハードなパート、そして再びメローなテーマとなり、メロトロンの高鳴りが哀愁感を盛り立てます。B-1同様ステージ・レコーディングにしてはキレイに録れていますのでポストプロダクションはしてそうです。
このアルバムは前作SPACE RITUALの8位には及びませんが全英16位のヒット、スタイルの変化は違和感なく受け入られたようです。
この74年ですが、ハウスは1月のオーディションを経て、3月からのUSツアーに同行。3/21のシカゴでの演奏がライブレコーディングされ、13年後にライブアルバムとして日の目を見ることになります。4月なかばに帰国後、このアルバムの制作を行います。レコーディング後にキングがサッカーで負傷、6月からの欧州ツアーでは代役にアラン・パウエルがステージに上がり、キング復帰後もそのまま居残りツインドラム体制がスタート。夏場は国内のフェスに参加。そしてデル・デットマーが脱退。9月から11月にかけてアルバム・リリースに合わせ3度目のUSツアーが実施されます。そのままベルギー、フランスを廻るツアーをこなし、12月に英国内を廻りました。メンバーの出入りやアルバム制作がありながらも相変わらずのハードロードをこなす1年でした。
・74年USツアーのライブアルバムTHE 1999 PARTY LIVE AT THE CHICAGO AUDITORIUM(1997)のレビュー
・国内初回LP-東芝EMI盤(1974)のレビュー
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2019/10/31 update