Compact Disc
EASTWORLD RECORDINGS - EWO042CD (2010)
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2010年も前年から引き続きATOMHENGE再発群が大量にリリースされていましたが、現在進行のホークスはというと、2005年TAKE ME TO YOUR LEADER、2006年TAKE ME TO YOUR FUTURE、2008年ライヴKNIGHTS OF SPACEに続き、2010年完全新作としてリリースされたアルバムです。
ディストリビューションを新たにEASTWORLD RECORDINGSと契約し、3つのバリエーションでリリースされました。スタンダードはこのCD1枚版。そしてボーナスディスク付きのLimited Edition2CD版。そして昨今のアナログ盤人気もあって久しぶりのLP(2枚組)版です。
同時にEASTWORLDを展開するPLASTICHEADはレーベルLET THEM EAT VINYLでホークスの過去作品のアナログ盤再発、また版権グッズ(Tシャツ、マグカップ、バッグなど)もECサイトで続々発売開始。
純粋なスタジオ録音のアルバムで、前作のライブKNIGHTS OF SPACEでブロック、チャドウィック、ブレイクのオールドメンバーに新顔のディブス、ステュアートが加わった演奏から、突然のステュアート逝去を経てギタリストのナイル・ホーンの加わった布陣で制作されました。デイヴィ脱退後の新世代ホークスという作品で、特にディブスやホーンという新メンバーの持ち味が反映されリフレッシュされた感があります。ゲストでマシュー・ライト、ジェイソン・ステュアートが生前の参加。
アルバムカバーは船出をする帆船Hawkwind号、左右に並ぶ像はDOREMIの裏カバーに描かれていた像。裏もHALL OF THE MOUNTAIN GRILLの宇宙船のイメージを使用し、過去の歴史や作品群を帯同し現在も邁進するバンドを象徴するようです。
Seahawks
I’ve become master of the universe というボイスからスタート。電子音のSEの中、ミドルテンポのベース・シークエンスとドラムのリズムが繰り返され不協和なストリングスがかぶり、ギターが呼応しながら、不気味ながらも力強い進行。そしてデイヴによる語り調のボーカルが入ります。ギターはアドリブを交えながら、デイヴのコーラスと共にテンションを上げていきます。一瞬のブレイクをはさんで、リズムレスとなり混成コーラスのパッド音がやや整合感のある和声進行。その後再び不協和声となり不安感をひきずる。ブロック作。
Blood Of The Earth
前曲から切れ目なしに続きリズムレスのまま、レイドバックのかかった、マシュー・ライトのボイスが登場。メロディーはなく不協和音の持続音、ノイズ、電子音など効果音中心の演奏。ブロック、マシューの共作。
Wraith
wraith = 生き霊。ブロックを除くメンバー合作で2008年頃からステージでは定番曲となっています。作曲者のクレジットにあるDarbyshireはMr.ディブスの本名Jonathan Darbyshire。ホークスのローディをしながらホークスフォロワーバンドSPACEHEADで活動していましたが、その曲想に近いです。前曲のマシューの語りを寸断するかたちで、ハイテンポなリズムにスローリフのギター、いよいよホークス節登場。電子音が飛びまくる中、投げつけるようにシャウトするデイヴのリードボーカル。ドラムがハード。ヴァース間にギターソロを挟み、スリリングに突っ走ります。2ndヴァース後ブレイクの長めのシンセソロ、定型パターンな進行ですが、さすが堂に入ってます。その後リズムレスとなり電子音とシンセによる静かなシーンから一度ブレイク後、ベースリフにひっぱられて、長めの間奏パート。ベースが主体、電子音とギターがSE的プレイ。リズムが復活し突き進む、ホークス真骨頂。ボーカル・ヴァースが戻ってきて、2拍打ちで締め。6分に渡る演奏で、新生ホークスを代表する曲。ボーカルのミックスがややオフ気味な印象があります。このWraithと同じように、作曲にブロックが参加せずメンバー合作を任せた曲は他に2曲あり、それらがアルバムにフレッシュ感を与えていると思います。
Green Machine
ホーンの手になる曲。前曲の喧騒とうって変わってゆったりしたシンフォニック系サウンド。和声進行、ベースのリズムがHALL OF THE MOUNTAIN GRILLのWind Of Changeを彷彿とさせます。ストリングスの和声進行にホーンのギターがかぶり、ブレイクのシンセと交互にメローなフレーズを紡ぐ。4分程度ですが、メロディが美しく感動的。
Inner Visions
ブレイク作。ホークスでのスタジオテイク単独作は初です。Lighthouse をよりハードにした印象の曲。LIVE 1979に収録の Lighthouseは一人演奏でしたが、ステージではリズム隊が入ってパワープレイに変化、その印象に近い楽曲。リズムセクションに加えギターが入ったバンド演奏。ブレイクのボーカルは年齢を感じさせるしわがれたものに。
Sweet Obsession
初出はブロックの1stソロEARTHED TO THE GROUND、その後5thソロMEMOS AND DEMOSにも収録され、今回で3rdバージョン目。ただし2ndバージョン目は1stバージョンとは全く違う曲調で、今回のは1stバージョンベースです。バースト音からいきなりスタート。もともと脳天気な明るい曲で、ここでもその印象のままさらにブラスサウンドまで追加され、ちょっとアルバムの中でも浮き気味な印象。
Comfy Chair
引き続きブロック作。シンセシークエンスにアコギのアルペジオが絡み、スローテンポなボーカルが物憂げに歌います。(おそらく)メインボーカルはチャドウィックと思われます。ブロックの高音域のボーカルも抑えめですが入っています。バイオリンが若干鳴っていますが、演奏者のクレジットがありません。昨年ホークスのステージに参加した、ジョン・セヴィンク(THE LEVELLERS)かもしれません。ボーカルパート後は軽いリズムセクションが入り、シンセのリードが流れつつ、そのままのムードで進行しフェードアウト。前曲と同じようにブロックのソロ作的な印象が強く、この2曲がやや浮いている結果となっているように感じます。
Prometheus
シタールの音色、メロディーともにエキゾチックな印象があり、サイケ風味はアルバム中最もある曲。ディブスがリードボーカル。ボーカルのメロディーラインをギターがなぞり、バックの演奏はスケール感を感じさせるアレンジ。ブロックを除くメンバー合作。
You’d Better Believe It
HALL OF THE MOUNTAIN GRILL初出のクラシック・ナンバー。ほぼ忠実にセルフカバー。チャドウィックが原曲のキングの走り気味なスティックさばきをうまく真似ています。中間、全体にチルアウトしたプレイになり、エレピをバックにホーンのリラックスしたギターソロ。リズムが復活し、ボーカルヴァースが繰り返されます。セルフカバーとして余裕のあるプレイ。
Sentinel
最終曲はブロック除くメンバー合作のバラード。Wraith同様、ステージでのレパートリー曲。ディブスがリードボーカル。終盤のブロックらしいギターソロ、これがあってこそのホークス。
ボーナストラックのStarshine
1CDバージョンにのみ収録のテイク。ブロック作で、演奏はブロックと故ジェイソン・ステュアート。バッキング・キーボードとエレキのみの演奏。ジェイソンによるスローなコードシークェンスをバックにデイヴがいつものギターソロを淡々とプレイ。メローな曲調であり、亡きジェイソンへのレクイエムでもあるようです。ジェイソンのキーボードは音色選びやジャージーなプレイがホークスに新しい感覚をもたらしましたが、ここでもその繊細な音色やプレーを聴くことができます。
2010年は6月に音楽誌MOJOでマベリック賞を受賞し、長年の活動と作品群に対する業界の再評価やリスペクトを受けるようになってきました。アルバムリリースに伴ったツアーを12月に実施、昨年の12月同様バイオリオンのジョン・セヴィンクをゲストに招いた布陣でした。
・BLOOD OF THE EARTHのLIMITED EDITIONのレビュー
・BLOOD OF THE EARTHのアナログ盤のレビュー
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2017/12/22 update